また会うことがあれば会いましょう。
更新日:2021年12月6日
2021年10月、密やかに長野で仕事があり諏訪市と辰野町に訪れた。
その時に米澤さんと辰野町のお蕎麦屋さんでランチをした。お店を出て米澤さんが私に言ったお別れの言葉が「また会うことがあれば会いましょう。」
その時一瞬何を言ったのか耳を疑った。え?今なんと?
「また会うことがあれば会いましょう。」普段ミーティングでZOOMで会うことがあるのに余所余所しい言葉。それがずっと引っかかっていた。
引っかかりすぎて、今朝風呂に入っている間に頭の中で思考整理をしていた。丁度月曜に米澤さんを分解するオンラインイベントがあり、それに向けて米澤晋也という人物のイメージを妄想していた。
すると全身傷まみれの姿がイメージとして表れる。その傷はどこでついたものなのか。それをイメージの中の米澤さんに問いかけて出てきた妄想ストーリー。
以下、そのストーリーを紹介したい。
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ここは中世ヨーロッパ。気高い山々がそびえ立つ麓に石畳が綺麗な小さな村があった。その村は貴族が村を統制しているものの、各自自分の意志で、自己責任で、自律した人々が集い、暮らしていた。
その村の一角に、昼はデリカッセン・夜はパブを営んでいる店がある。この店の名は「ルイーダ」。このルイーダを切り盛りしているのが女店主の「フジコ」。
昼は美味しい総菜を販売するデリカッセンで、夜は色んな人がこっそりと集まるパブ。1日の売上げを達成すると昼でもパブに営業を替え、来た客に酒を振る舞う太っ腹。そんなお店に1人の旅人がやってきた。
カランカラン、ドアに付けていたベルが来客を知らせる。もの静かに店内に入店してきたのは紺色の古ぼけた帽子と着古した服を身にまとい、パイプをくわえた背の高い男。
フジコ「あんたみかねない顔だね」
旅人は無言でカウンターに腰をおろす。
ルイーダの常連客ユーイチが手を上げる。彼はこの店の常連の中で1、2を争う程の常連。ルイーダにほぼいるため、町民はユーイチは仕事をせずに気楽に酒を呑んでいる奴と思っている。ユーイチがカウンター越しのフジコの耳元でささやく。
フジコ「はい、これアンタにってさ、あちらのお客さんから」
旅人「あ、ありがとう」
意外なもてなしに戸惑いながらも酒の奢り主であるユーイチに会釈と礼を言う旅人。なんの大した事ないさと右手を軽く上げて返事をするユーイチ。
ユーイチ「ルイーダへようこそ」
旅人とユーイチはお互いの出会いを祝福し乾杯をした。
フジコ「あんた名前は?」
旅人「シンジ」
フジコ「シンジさんね、よろしく」
シンジの飲むグラスにコツンと自分のグラスを重ねて軽く挨拶。今日のフジコは機嫌が良いらしい。機嫌の良い時はお気に入りのグラスで酒を呑む。グラスの種類で常連客はフジコの機嫌を察する。
フジコ「あんた顔だけでなく、全身傷まみれだけど、何してんのさ?」
シンジ「ああ、ただの旅人だよ」
フジコ「なんで旅人が顔にそんな大きな傷をつけるのさ」
ハハっと豪快に笑い酒を大飲みするフジコ。あまり話をしたくない雰囲気を醸し出しているシンジの気持ちを察しつつも、変わった来客に対して知的好奇心が納まらないフジコは自分のお気に入りのタバコに火を付け、至福の一口目を味わいながら煙を吐き出し、両手をカウンターにつけて、さらにもう一服吸い、煙をシンジの顔に向けて吐いた。
シンジ「…いい香りだ」
自分の顔に向けてタバコの煙を吐かれた事に一切動じることなく、ただ静かにフジコの挑発をかわす。
動じない客人をフジコは気に入ったらしい。
ポソっと…へえ面白いとつぶやく。
フジコ「あんた面白いね。気に入ったよ」
フジコ「このタバコは滅多に手に入らない奴でさ、、、吸うかい?」
フジコからのもてなしに動じることなく、静かにタバコを吸うシンジ。静かに味わうようにタバコを嗜んだ後、静かなる旅人が話し出した。
シンジ「この顔の傷は、クマにやられたんだ…」
フジコ「クマ?なんでさ」
シンジ「ぼく、旅してるからさ、自給自足なんだ」
フジコ「で?」
シンジ「ある川で鮭を捕ってたんだ、そしたら鮭を捕っているのを見かけた熊が、その鮭は俺の物だってイチャモン付けてきたんだ」
フジコ「………」
カウンターの端で話を聞いていたユーイチとフジコは目があった
シンジ「それで、それはおかしい!って文句言ってやったんだ!」
フジコ「え?クマにかい?」
シンジ「そう」
シンジ「川はみんなのものだ、誰のものでもない。ましてはクマ一匹のものではない」
シンジ「クマは鮭をよこせって言ってくるんで、断固拒否したんだ」
フジコ「…それで?」
シンジ「掴み合いになって、クマと」
フジコ「クマと? クマと喧嘩したってのかい?」
シンジ「ああ、そう」
ユーイチがニヤニヤしながら話を聞く。
フジコ「というかさ、シンジさん、あんた熊と話せるのかい?」
さらにニヤニヤするユーイチ。
シンジ「…なんとなく。」
フジコ「で、その時の喧嘩でその顔の傷がついたって訳かい?」
シンジ「…そう」
この村人にも熊と格闘するやつがいるが、村に熊が来た時に村民を守るために熊と闘うヤツはいるが、自分の食料を熊と取り合うために格闘する旅人って聞いたことないと、別の客がヤジを飛ばす。
シンジ「…ところで、この店にある酒があるって聞いたんだ…」
フジコ「…ある酒とは?」
シンジ「…密造酒」
ユイーチ「!!!!!!」
フジコ「!!!」
ルイーダにいた全員に緊張感が走り全員の息が止まった。
密造酒は知られてはいけないお酒。それがどうして一元の旅人がこの店に密造酒があると知っているのか、、、
フジコは冷静に、そして動揺した様子を見せず、シンジにこう言った。
フジコ「旅人のシンジさんよ、ウチの店に密造酒があるって、なんで知ってるんだい?」
シンジ「シゲさんに聞いたんだ…」
ユイーチ「……………」
フジコ「…シゲさん…シ…」
フジコ「あぁ!世界の密造酒を探し求めるシゲさんね!」
シンジ「旅の途中で時々シゲさんとすれ違うんだ」
シンジ「直近でであったのが、さっき話していたクマと格闘してる時でさ、熊と格闘してるのを黙って見てるんだよね。で、熊と格闘が終わったら『楽しかった?』ってとぼけて聞くんだよ。『闘う必要ありますか?』ってさ、参っちゃうよ。見てないで助けてくれよって(笑)」
フジコ「ははは!シゲさんらしいわね。」
シゲさんを知っているルイーダの常連客はフジコにつられて共に笑う。
フジコ「シゲさんの紹介だったら間違いのない『スジ』ね。わかったわ。」
床下に隠していた密造酒を出して、その場にいた客人全員にもてなすフジコ。
フジコ「この酒はね、人と人を繋ぐ酒なのよ。」
ユーイチ「この夜の出逢いに、かんぱーい」
シンジ「ある村に面白い女店主の酒場があるって前から聞いてたんだ」
シンジ「そこにある密造酒を飲むと、世の中をタクラメルらしい、と」
フジコ「それで、わざわざ?」
シンジ「ぼく、方向音痴で。行きたい場所に辿り着けないんだ」
シンジ「だから行く当てを決めず、気ままに旅をしているんだ」
フジコ「何のために?」
シンジ「自由を求めて」
フジコ「自由?」
シンジ「ぼくは、決められたことが嫌いなんだ。なにより心が自由でありたい」
シンジ「だから、ぼくは、いろんな自由に出会う旅をしてるんだ」
シンジ「シゲさんにルイーダの話を聞いていたけど、どこにあるかわからなくて」
シンジ「それで、道を歩いていたらつまずいて転けて、顔上げたら目の前にルイーダという店名の店があっって。」
シンジ「シゲさんに、たくらみ口が印だって聞いてて…」
フジコ「そう、それは光栄だこと」
フジコ「シゲさん、今はどこに居るのかしらね?」
シンジ「東の果てに向かうって言ってた。そこにはSAKEという密造酒と、人の話を聞かないサルと、物を見ないサルと、何も言わないサルがいるって言って、会いに行くって」
シンジ「ごちそうさま」
そういうと立ち上がり、ユーイチにお礼をいい、店内の客人に会釈をする。
フジコ「もう行くのかい?」
シンジ「人との出逢いもジャムセッションのようだ」
シンジ「よいセッションをさせてもらったよ、ありがとう、フジコ」
シンジ「また会うことがあれば、会う日まで…」
そう最後にお別れの挨拶をして、ルイーダを後にスマートにするシンジ。
「ドンガラガッシャーーーン」店の外で賑やかな音がした
フジコ「あの人の傷ってさ…」
ユーイチ「多分、熊だけでないと思うよ?」
ここは中世ヨーロッパ。気高い山々がそびえ立つ麓に石畳が綺麗な小さな村にある、ちいさなデリカッセンとパブのお店、ルイーダ。目印はタクラミの口。今日も店主は豪快に村人と共に酒を呑む。
ーーーおしまい。